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人生自分満足可其充分
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何を思ったかスザジノ♀(スザ←ジノ?)で御座います。苦手な人は要注意。しかも悲恋です。スザユフィ前提だもの。
スザクさんの女体化は許せないのにジノさんの女体化は許せる自分。…あれぇー?
ジノってイタリア人男性名らしいので、一応ここではジーナと名乗らせています。愛称はジノってことにしておいてあげてください。どうせ痛い内容ですから。

 天井を見つめながら、枢木スザクはぽかんと間抜けに口を開けていた。背中に柔らかいソファのクッションが当たり、夏の終わりを告げるような冷たい風が窓から入り、頬を撫ぜる。徹夜続きなスザクにとって眠気を誘うには十分な条件だ。出来るならば、今すぐにでも眠ってしまいたい。しかし、なかなか目の前の現実というものがそれを見事に阻んでくれるわけで。スザクは金髪の間から見える天井から、青い双眸へと視線を移した。
 「何のつもりかな…ジーナ・ヴァインベルグ卿」
 「ジノって呼んでよ」
 すかさずジーナ・ヴァインベルグ、もといジノは酷く真面目な様子で訂正を求めた。スザクは少し溜息をつきつつも、相手に気付かれないよう体制を少しずつずらしていく。
 「ではジノ。君は一体何をしているんだい」
 「スザクを押し倒してる」
 頭痛がした。
 「ああそうだ。まさにその通りだ。で、君はどうして僕を押し倒しているのかな?」
 極力やさしめの低音の声に、ジノが少し顔を赤らめたが、スザクはそれどころではなかった。とりあえず、下に散らばった資料が気になって仕方ない。汗と血と涙の結晶…とは少し言いすぎだろうが、あの書類のおかげで、体力馬鹿であると自負しているスザクでさえ今回ばかりは滅入っていたのだ。慣れない事務作業であったせいもあるだろう。肩は凝るしだるいし身体は熱いし(消して下々の意味ではなくだ。)目は痛いしで、今日は殆ど非番に等しいので、ベッドに沈もうとしていたところに、突然ジノが押しかけてきたのだ。書類を片付けようと彼女に背を向けたのが運の尽きとでもいったところか。女性の平均以上の長身のモデル体系とはいえ、かなり整っている容姿の女性に押し倒されるというのも、なんとも間抜けな話である。しかも、相手はなぜかラウンズ服のインナーの前をはだけていた。下に敷かれているスザクの目には容赦なく谷間が視界に映る。しかし、それくらいで動揺するほどスザクは初心ではなかった。ある意味唯一これがジノの敗因とも言えるだろう。
 「逆レイプするため」
 ジノは真剣に答えた。スザクの顔は真っ赤になるどころか、表情筋が引きつっている。
 「……ほう」
 次の瞬間には、大きく溜息をついた。その様子に、ジノはむっとする。
 「何を馬鹿なことを考えてるのかは知らないけど、僕はねジノ、疲れてるんだよ。だからどいてくれないか」
 「…スザク、私は本気だ」
 「あのねぇ…ジノ。いい加減にしてくれ。さあ、どくんだ」
 右手をジノの肩にかけて、ぐっと押し上げる。なんとか上体を起こす形にはなったが、ジノはスザクの上に乗っかったままだ。スザクはこのまま退いてくれることを期待したが、一向にその気配はない。青い瞳は挑戦的に此方を睨みつけている。男にはその強い視線が刺激的で好む者もいるのだろう。だがこの枢木スザクはやはり例外なのだ。今の彼には、目の前の長身の彼女が駄々をこねている子供にしか見えない。
 暫くそうしていると、ジノのすらりとした長い両腕がスザクのインナーに伸びた。ジジッとファスナーが下ろされていく。スザクは抵抗しない。視線を下に向けているジノの双眸を、隈の浮かんだ目でただ見据えていた。
 ファスナーが最後まで下ろされそうになる直前で、ジノの手がぴくりと止まる。長く細い指が、探るようにスザクの肌を滑る。少しばかりその両手は震えていた。スザクは相変わらず無反応だ。
 「どうしたの。もう満足した?」
 「スザ、ク…」
 「じゃあもういいよな。僕は寝るから、君はちゃんと部屋に戻るんだよ」
 胸を滑る白い手を手掴みで離し、スザクは無駄のない動作でジノの拘束から逃れた。途中で止まっていたファスナーを全て下ろし、インナーを脱ぎ捨て、着替えを手に脱衣所へのドアノブへ手を伸ばす。
 「スザク!」
 高めのハスキーな声と共に、背中にどんっと衝撃。長い腕がスザクの胴に回され、ドアノブに伸ばされようとしていた手が静かに下ろされる。回された腕は女性にしては強い力で胴を締め付け、息苦しさを感じたスザクは身じろきして向きを変える。そして肩越しに背中に押し当てられた金髪を見下ろした。
 「…ジノ、放して」
 「スザク、スザク……ごめん。ごめん…!」
 「別に怒ってないよ。ただ、疲れてたんだ。きつい物言いになってごめん」
 子供や妹を宥めるかのように、スザクは自由な方の手でジノの頭をぽんぽんと叩いてやった。やっと顔を上げたジノは、目尻に少し涙を滲ませながら、少し隈が目立つスザクの顔を見上げた。いつも明るく気丈な少女で有名な彼女がこうも弱気になるのは、家柄関係か、スザクが関係することくらいだ。無論、スザクもそれを知っている。彼女がどれ程自分のことを大切に想ってくれていて、愛してくれているということ。毎回、身体を張って真っ直ぐにその想いを伝えてくれているということ。今日は、少し強硬手段ではあったが。
 (それでも僕は、彼女の想いに答えてやることは出来ない。)
 けれど明確に拒否の意思を告げてやること一度きりで、あとはどうしても出来ないでいた。卑怯だということは重々承知している。それでも、ジノはあまりにも真っ直ぐだったのだ。スザクが固く誓った想いさえ揺らがしてしまいそうなくらいに。
 しかし、それは決してスザクには許されない。
 「ジノ。前にも言ったけどね。僕は君のことを、一人の女性として見ることはできない。けれど、それは君に魅力がないからってわけじゃないんだ。僕にはもう、心に誓った人がいる」
 「…それは、ユーフェミア様…だろう」
 「うん。そうだよ」
 この会話をこれまでに何度繰り返したことか。
 「でも!もう、あの方は…!スザクはもうあの方の騎士じゃないだろ!」
 「そうだね。でも、心は彼女と共にある。そうありたい」
 「どうして私じゃ駄目なんだ…!」
 その台詞も、一体何度目だろうか。スザクは、こうやって何度も何度も真っ直ぐで正直な彼女を傷つけている自分が嫌いで仕方なかった。卑怯で、卑劣で、なんて小心者なのだろう、と。いっそのこと、「お前なんて嫌いだ」とか言ってやれば、ジノも愛想を尽かして離れていってくれるだろうに。否、それすらもありえないとわかってしまうから、スザクは実行に移さないのだ。
 だからスザクは、逆を突く。
 「君のこと、嫌いじゃないよ。妹みたいだと思ってるんだ」
 「…っ!なんで…!」
 お前は酷い男だ、最低だ、とジノは泣き叫ぶ。そんなの自分が一番よくわかってるよ、とスザクは心の中で答えてやる。決して口には出さない。口に出してしまえば、ジノに希望の道を与えてしまいそうになる。これは決して優しさなんかじゃないから。
 嗚咽し、押し付けてくる彼女の頭を片腕で抱きかかえながら、スザクはまたぽん、ぽん、と叩いてやる。嗚咽は治まるどころか、どんどん大きくなるばかりだ。それを知っていながら、スザクはジノに訴えかけるように、その手を止めなかった。
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