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 「暑い…」

 買い物籠を片手に、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは枢木神社に続く長い石階段を重い足取りで上っていた。毎回思うが、なぜこんな高い山の上に神社を建てたのだろう。麓に街があるのだし、そちらに建てればよかったのに。効率が悪い。敵襲されたときには周りの木々がカモフラージュになってくれるだろうが。暑さで見当はずれなことばかり考えている。意識が朦朧とする。視界は白くぼやけていた。
 う、と呻いて、ルルーシュはあえなく膝をついた。階段は日の焼けて鉄板のように熱い。どうにか持ちこたえて、日陰に入ろうとするが、上手く身体が動かない。このまま焼かれて枯れて死ぬのか、ナナリーを置いてけぼりになんてできないのに。自分の不甲斐なさで出たのは涙ではなく汗だった。

 「大丈夫かい」

 その時、突然自分に影が出来た。階段のど真ん中で空を仰いでいたのに、日を遮るものがそこにあるはずがなかった。
 声の方に緩慢な動きで見上げると、シャツにジーンズという、ラフな格好の男が立っていた。ルルーシュは警戒して、勢いよく起き上がるが、反動で頭がぐらぐらし吐きそうになる。

 「熱中症になりかけてるね。日陰に行こう」
 「さ、わるな…!」
 「わがまま言うなよ。死にたくないだろ」

 男はルルーシュの抵抗を物ともせず、横抱きに抱き上げた。買い物籠はいつの間にか男が回収して、ルルーシュは木陰の下に下ろされる。何かプライドがズタズタにされた気がしたが、今大声を張り上げる気分にはなれなかった。

 「水、持ってる?」、男はポケットからハンドタオルを取り出して尋ねた。ルルーシュはもう声を発することすら辛いのか、素直に買い物籠を指さした。

 「ミネラルウォーターか…ちょっと温いな。使うよ?」
 「…う…」

 男はミネラルウォーターの入ったペットボトルのキャップを開けると、ハンドタオルを塗らした。余った水は絞り、ルルーシュの額に乗せてやる。残った水はルルーシュに持たせ、飲ませた。少しずつで構わない、と言うと、間隔をあけてペットボトルに口をつける。顔色はまだ悪いが、少しはよくなったようだと、男は安堵のため息をついた。

 「今度からは帽子を被るんだよ、ルルーシュ。日本の夏を甘く見てはいけない」
 「…あなたは…枢木の人か…?それとも、桐原の…?」

 顔を確認しようにも、日の逆光で見えない。ルルーシュが目を細めながら息絶え絶えに尋ねると男は少し困ったように肩を竦めて見せた。

 「近からず遠からず、だね」
 「…名前…」
 「ルルーシュ。今は無理はしない方がいい。その内、君の友達が探しに来るだろうし」
 「ともだち…」
 「うん。きっとね」

 男は微笑んだ。影になっていてほとんど見えなかったが、その笑い方はどこか、よく知っている気がして、ルルーシュは手を伸ばした。男の顔に伸びる前に、男の手がそれをやんわりと受け止めて、小さな手を少年の膝に戻してしまう。
 その代わり、男の大きな手がルルーシュの両目を塞いだ。

 「おやすみ、ルルーシュ」

 男のその声が、切ないくらいに優しくて、ルルーシュは涙で溢れそうな目を閉じた。


 やがて、少年が寝入ったのを確認した男は立ち上がった。
 日はすでに傾き始めている。そろそろ、“自分”がルルーシュがなかなか帰ってこないのを心配して探し回る頃だ。少年の顔色も段々よくなってきたし、もう自分がいなくたって大丈夫だろう。
 枢木スザクは小さな“友達”を見て、微笑んだ。着ていた服は、いつの間にか黒のインナーに白いスーツ、ナイトオブセブンのものになっていた。それはもうここには居られないという合図。

 ひとときのしあせな夢だった。

 「さよなら」

 スザクは石の階段を下りた。
 向かうのは、真っ赤に染まった大地だ。
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