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人生自分満足可其充分
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 「あなたも、お兄様と同じなのですね」
 「…ナナリー殿」
 「やめてくださいスザクさん。わたしは、わたしはもう何も知らなかったわたしではありません」
 強い言葉と共に、ナナリーはスザクの手に彼女らしくない強引さで手を伸ばした。だが、スザクはその手を握り返そうとはしない。ナナリーの眉は潜められ、彼女は小さな口をわなわなと震わせた。
 「教えてください。スザクさん。あなたとお兄様は、一体何を隠しているのですか」
 「それはご命令ですか」
 「いいえ、お願いです」
 「…ならば僕は、答えられない」
 伸ばされた小さな手が、拒絶に怯えたように落ちた。しかし、ナナリーの表情は強い決心に満ちている。スザクはいつか自分が慕っていた人を思い出して、眩しそうに目を細めた。後ろめたさなど、彼女が総督に就任する前から抱いているため、スザクにとって新しい動揺はなかった。ただこの場で、今この時に、彼女に真実を話すべきではない。
 エリア11が衛星エリアに確定されるまではもう秒読みだ。そんな中、ナナリーを失っては、そのプランは一瞬にして瓦解してしまう。それだけは、避けたい。いいや、それはただの言い訳にすぎないことをスザクは知っていた。手袋を取った右手が、強く拳を作る。
 「わたしの頼みでも、ですか」
 「ああ」
 「…何故わたしからお兄様を隠そうとなさるのですか。それは、一年前の」
 「ナナリー殿下!」
 スザクが大きく声を荒げる。ナナリーの小さな肩は、今まで向けられたことのない大きな激情に硬直した。目の前にいる男が、人間が、嘗て自分の手を優しく包んでくれた人とは到底思えなかった。
 今度は声を控えめにして、スザクは言う。
 「自分は今でこそ総督補佐を勤めている身ではありますが、自分はナイトオブセブン、皇帝陛下の剣」
 立場に逃げている、とスザクは心の底で自分を嗤った。
 「そして、貴女様はエリア11総督閣下。…ナイトオブセブンである自分の任務を、閣下に明かす義務はありません」
 最低だ。スザクはエリア11、行政特区日本のために、本人の事情も意思も関係なく骨の髄までナナリーを利用しようとしている。今ここでルルーシュのことを話してなんのメリットがある。彼女に疑念が生まれ、またそれを契機としてゼロが攻めてくるとも限らない。隠していたところで、疑念は積もるばかりだろうが、真実を話せば、彼女を本国に強制送還しなければならない。それだけは、それだけは。
 「スザクさ…」
 「お話はもう宜しいですね。自分はこれで失礼致します」
 ではまた、午後の会議で。
 スザクは振り向かず、総督執務室を後にした。
 ナナリーが後ろで泣いていたことには、気付かない振りをして。

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スザクさんは絶対本当のことは話さないと思う。
エリア11のために、ユフィの夢のために今の彼があるんだから。
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