新参者にやることなど殆どなく、暇を持て余していたところで、ハロとかいう機械に暇つぶしに丁度いい場所があると案内されたのがこの展望だった。
入ってみると、先着がいたようだ。これが全く面識のないクルーならば引き返したが、見知った後姿を確認して、ライル・ディランディもといロックオン・ストラトスは小さく息をついた。
すると気配に気付いたのか、刹那・F・セイエイが無感動な瞳のまま振り向いた。
「ロックオン、ストラトス」
「なぁ、それ止めないか」
相変わらずフルネームでコードネームを呼ばれることには違和感を感じる。兄もこんな感じだったのだろうか。その時訂正はしたのだろうか。姿は似ていても自分は兄ではないし、生活を共にしたのも随分昔の話だ。双子だからと言って兄の行動原理がわかるわけもない。
己の提案を聞いて、刹那は一瞬わけがわからないという顔をした。
「空港ではコードネームで呼べと言われたはずだが」
どうやら勘違いをさせたようだ。
「あー…そういう意味じゃない。ただのロックオンって呼んでくれよ。フルネームって、なんか居心地悪い」
「そういうものか」
「そういうもんなの」
あっさり頷いてみせた刹那に、ロックオンは心なしか意外に思った。彼のファーストインプレッションは、サバサバしていて一匹狼的な印象を感じたため、「狎れ合いなどごめんだ」くらいは言われると思っていたのだ。もしくは、「必要性が感じられない」とかなんとか。そこまで考えていて、ロックオンは自分がどれだけ刹那を捏造していたのか身をもって知った。しかしそうさせるくらい、彼には感情というものが見えない。
「この艦は新参者には居心地が悪い」
刹那は言葉を詰まらせた。
「…まだ慣れていないせいもあるんじゃないか」
「なら、良いんだけどな。でも問題はこっち側じゃなくって、そっち側だから、俺にはどうしようもねーんだよな」
肩を竦めて見せると、刹那は視線を逸らした。
それとほぼ同時に、ロックオンは展望の強化ガラスに近づき、自分より幾許か低い少年の隣に降りた。
「面白いくらい、みんな同じ反応をする。そんなに兄さんと俺は似ているか」
「…姿は、そうかもしれない。性格は、わからないな」
「へぇ。兄さん、面倒見がよかったろ?」
その言葉に、刹那は答えず視線だけロックオンに向けた。そうかもしれない、という顔をしている。ああやっぱり、とロックオンは頷いた。
「一家の長男だったからな。元々兄貴体質だったんだ。…俺は、きっとそうじゃない」
「同じになる必要はない」
身体ごと向いて宣言され、今度はロックオンの方が言葉を詰まらせた。余りにも真っ直ぐな瞳は此方から目を逸らしたくなるくらい、突き刺さるような痛みを覚えさせる。それを誤魔化すかのように、ロックオンは瞼を伏せた。
「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
なら、なんでお前は俺にロックオン・ストラトスというコードネームを与えたんだ、とは言わなかった。彼がソレスタル・ビーングの全権を握っているわけではあるまい。上からの命令で、彼の口から聞かされることになっただけだ。
同じ姿、同じ名前。兄弟だから、双子だからこそ、共通点が多いこと。そこには殆ど差異はない。新しいガンダムマイスターを求めているのならば、別に自分でなくたって良かったはずだ。
ならばその“上”とやらは、“それ”を求めていると判断した方がいいのだろう。ソレスタル・ビーングは“ロックオン・ストラトス”を少なからず必要としている。それが一見余り仲が良いように見えないマイスターズのことに関係しているのか、それともガンダムに関係しているのかはわからないが。
何しろ、情報が少なすぎる。けれどロックオンにとって、ライルにとってそんなことはどうでもよかった。
自分はただ、兄の仇をとりたいだけだ。
「俺は、いつになったらお前みたいに戦えんのかね」
「…さぁな」
その時、刹那の瞳が不意に揺れたことに、ロックオンは気付かなかった。
こんな感じで00初小説。口調わかんねー。はやとちりすぎる。