預言に死を宣告された俺の代わり身になるようにと連れてこられたのは、俺とそっくりな顔をした子供だった。子供といっても、俺と同い年くらいだ。けれど父が言うには、生まれてまだ数ヶ月らしいという。この俺にそっくりな子供は、自分のことを『レプリカ』だと名乗った。お前の『代替品』として死ぬのだと、億尾にもせずに。
俺は呆然とした。だって本当に鏡が目の前にあるのかと思うくらい俺達はよく似ていた。だから余計におぞましかった。俺という存在の代わりを作れるこの世界にか、それとも、自分ももしかしたら『レプリカ』なんじゃないかという何処からか湧いた恐れか。どちらにしたって気分の良いものではない。
「お前、名前は」
「通し番号なら」
「違う、名前だ」
「ないです」
必要もないでしょう。でも死ぬ為には貴方の名前を一度お借りしなければなりません。ご無礼をお許しください、『ルーク』様。
吐き気を催しそうだった。誰か目の前のこいつを俺の目の前から消してくれ。俺の顔で、俺の声で、そんなことを言うな。俺は人形じゃない。『俺』は人形なんかじゃない。
「では、お前がアグゼリュスに向かうと」
「はい」
答える声は淀みない。
「お前が死んで、俺はずっとこの屋敷に居残っていろと」
「俺が死ぬことは公にはされません。だから、貴方は無事アグゼリュスから帰ってくることになる。帰国後子爵位を賜りになられるかと」
「成してもいないことで施しを受けろというのか!!」
そんな馬鹿な話があるか。
俺は否定した。レプリカとは言えアグゼリュスに行くのは俺じゃなくこいつだ。なのに褒美は俺に与えられるだと。おかしいだろ、そんなの。
すると『レプリカ』は小首を傾げて疑問の表情を浮かべ、次の瞬間には諭すように口を開いた。
「どちらにしろ俺は貴方の『レプリカ』だ。貴方から生まれたのだから、これは貴方の功績です」
そんなアッシュ(ルーク)とルークの関係。