気付いたら、見知らぬクレーターの底に座り込んでいた。
今までどうしていたのか記憶はない。カレンが乗る新型の紅蓮弐式に致命的な傷を負わされかけて、そして、…それからが思い出せない。
ここはどこだろう。辺りを見渡す。土むき出しのクレーター。障害物で遮られない丸い空。世界の取り残されたような、そんな感覚だ。
近くにあるランスロットのエナジーフィラーは尽きている。急な傾斜を自分で上がるしかないのかと思うと、少し気が重い。
「違う」
違う。根本的に違う。自分は知っている。ここを。このクレーターが何によって生み出されたのかを。
見上げた頭上には宰相が率いる空中戦艦アヴァロン。ここはきっとエリア11。そして、ここは。
「…撃った?」
ランスロットの腰部分に取り付けられているはずのフレイヤは、ない。
記憶はない。だがスザクは確信していた。あの時自分は「死ぬ」と思ったのに、今「生きている」という事実が鋭く頭に突き刺さる。
トウキョウ租界。誰がいた。民間人だ。ブリタニア人も名誉ブリタニア人も、戦っていた軍人も、日本人も、黒の騎士団も、戦闘に関係のない人間が、たくさんいたはずだ。たくさんの人がこの地で生活していた。たくさんの建物があった。たくさんの人がいた。
なのに。
残っているのは大きなクレーターだけ。
中心にいるのはスザクとランスロットしかいない。
ナナリーは。ナナリーはどうしたんだ。あの時、まだ、
「政庁に…?」
既にエリア11に政庁は存在しない。今スザクの立っているその場所こそが、政庁が建っていた場所だ。
逃げているはずだ。逃げているはずだと信じたい。否違う。違う、ナナリーじゃない。違う。
「撃ったのか…?また、僕は…俺は…また…?」
へたり、と少し熱を帯びた土に膝を折る。
見開いた瞳は、丸い空に浮かぶアヴァロンを凝視する。
太陽が、見えない。
大きなノアの方舟はスザクに大きな影を作った。
撃ってしまった。記憶はない。
だが、撃ってしまったのだ。
撃ってはならなかったのに。
「は…はは…っ」
渇いた音が喉を鳴らす。
「あ…はは…撃ったのか、そうか…また僕は生きてるのか…また…っ
ははは…ははははははっ」
口は笑っていない。音だけが円形の壁に響く。
もう、笑うことさえ忘れてしまった。
もういい。
「死んでやるさ、ルルーシュ」
呪いに抗って、抗って、抗って。
そして最期に、お前に。
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あれがもし、笑っているんだとして。
表情は笑っていないから、慟哭だと思うんだけど。でも肩が揺れてるからなぁ。
笑顔がもうわからなくなって、声でしか笑えなくなっちゃった、とか。
そんなやんでる枢木さん、好きになるしかない。
再確認した。かれこれ10回くらい検証してみた。
やっぱり笑ってるよあの子。壊れちゃったのかな。
これでルルーシュは本当に全部失った。ざまあ、とは言わんがな。自業自得だ。
このまま壊れたスザクが公式化してくれれば願ったり叶ったりなんだけどね。こういうと悪いけど、あの子ももうナナリーという負い目はないわけだ。もう好きにできる。新しいランスロットで暴れればいい。殺してくれる誰かを見つけるまで。
毒死って出来るのかな。どうなんだろう。でもスザクさんは誰かの為に死にたいんだよね。
ジノにはもう余り期待できない、かな…。もうここまで来ると手は出せないでしょうよ。だって何も知らないもん彼。
櫻井氏、まじで頑張れ。