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人生自分満足可其充分
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マイスター専用ブリーフィングルーム。目の前には鹵獲したイノベイターが一人。そしてロックオン・ストラトス、スメラギ・李・ノリエガ、アレルヤ・ハプティズム。ヘルメットを未だに被ったままの同類(認めたくもないが)に、鋭い眼光を光らせながら、ティエリア・アーデは俯き加減に悶々と思考に浸っていた。

 『やめろぉおおお!!』

 脳内に直接届いたあの声の感覚。あの感覚は、ティエリアに覚えがあった。岸壁の上で出会った、自分と同じ顔をした男。目の前にいるというのに、嫌がらせのように直接脳に語りかけてきた。忘れられるわけがない。あの能量子波は、彼に不快感しか与えなかった。自分の全てが覗かれているような、そんな感覚。

 先の戦闘中に聞こえた叫び。
 あれは、二重に重なっていた。一方は沙慈・クロスロード。そしてもう一方は、刹那・F・セイエイ。
 彼らはイノベイターではない。だがあの時届いたのは確かに二人の声だった。そしてダブルオーから放出された、異常なまでのGN粒子。それが何か関係しているのか…。

 現状を把握したいが、今はそんな暇はない。鹵獲したイノベイターから、ヴェーダの情報を引き出さなければ。
 ティエリアは再度イノベイターを睨み付けた。

 「気になるの?」
 ヘルメットでくぐもらせながら、相手を探るような抑揚の声が響く。ティエリアは表情を厳しくし、銃口を向けた。
 「発言を許可した覚えはない」
 「これはこれは…酷い扱いだ。数少ない兄弟なのに、悲しいなぁ」
 心にも思っていないことを。挑発に乗ることなく、ティエリアは目線で訴える。能量子波を受けているわけではないが、こういう手合いは会話に乗らない方がいいだろう。
 「ねぇ、刹那・F・セイエイはどこ?」
 個人名が出てきたことに、ティエリアはハッとする。
 (何故、彼らは刹那のことを…。いや、この男はイノベイターだ。ヴェーダを掌握し、レベル7の情報を所持しているのなら、ありえないこともない)
 彼が問う先にいたのはロックオンだったが、返答はない。当然の判断だ。男も深入りするつもりはないのか、肩を竦ませるだけで落ち着いた。
 (だが、何故刹那なんだ…)
 刹那がイノベイターと接触したという話は聞いている。彼の不在時の報告によれば、アリー・アル・サーシェスから銃撃を受け、そこでリボンズ・アルマークと名乗るイノベイターに出会ったと。だが、それだけだ。報告を受けた時、彼は重症でカプセルで長期間眠っていたから、詳しいことはあまり聞けずにいた。
 目の前のイノベイターから刹那の名が出されたことに、深い意味はあるのだろうか。それとも、ただの興味か。

 「すまない、遅くなった」

 少し頬に汗を伝わらせながら、刹那は入室してきた。
 正直、今の会話からして、彼を呼び込んだのは失敗だったような気がしてならない。刹那からイノベイターへと視線を向けると、存外、彼は特に反応しなかった。
 「さぁ。ヘルメットを外して貰おうか」
 ティエリアの言葉に、イノベイターはおとなしく従った。その数瞬の間でさえ、ティエリアの動悸が激しくなるには十分だった。
 もし、あの時出会ったイノベイターと同じ、自分と同じ顔をしていたら?
 形容できない畏れが胸を占める。

 ヘルメットから見えたのは、ティエリアよりも遥かに色素の薄い紫がかった髪。そして、どことなく初対面ではないような顔つき。
 「初めまして。僕はイノベイター。リヴァイブ・リヴァイバルといいます」
 少年とも少女ともとれない中性的な顔は、挑むようにティエリア達を見渡した。壁に寄りかかっていたロックオンは何か反応したようだが、ティエリアと同じ考えだろう。彼の顔、髪色、容姿。そう、全てがアニュー・リターナーを彷彿させる。
 「…まさか」
 「どうかしたのかい?ティエリア・アーデ」
 まるで「よくできました」と言わんばかりにリヴァイブは笑みを浮かべた。握り締めている銃口が、動揺で震える。
 「ティエリア?」
 アレルヤが不審げに声をかけた。
 (まずい、まずい…危険だ、これは、危険だ…!)
 「船橋に、船橋に連絡を!」
 ティエリアははち切れんばかりに叫んだ。
 「アニュー・リターナーはどこだ!?」
 すぐさま反応したのはロックオンだったが、「艦の操縦を…」と答えたのはスメラギだった。
 「今すぐ彼女を拘束するんだ!」
 「ティ、ティエリア?一体何を…」
 「彼女はイノベイターだ!!」
 室内が驚愕に震える。ティエリアはキッとリヴァイブを睨んだ。
 リヴァイブはただ不敵に笑みを浮かべるだけだ。
 「アレルヤ、船橋に連絡をとってアニューの行方を」
 「わかりました」
 「刹那は格納庫とイアン達の安否確認を」
 「了解」
 頷いた彼らは手早くブリーフィングルームを後にする。
 テキパキと指示を出す戦術予報士をよそに、ティエリアは怒りに染まりあげグリップを両手で握り締めた。
 「ティエリア!」、スメラギが制止の声を上げるが、ティエリアには聞こえていない。
 人差し指がトリガーにかけられる。
 「やはり君は、殺しておくべきだったようだ…!」
 全てはイノベイターによる策略だったのだ。我々は、彼らの手に踊らされていただけ。
 リヴァイブは恐れ慄くこともなく、にやりと笑う。
 「いいのかい?」
 小首を傾げて、目を細めた。
 「僕を殺してしまったら、ヴェーダの所在は掴めないのでは?」
 クソヤロウが、と吐き捨てたのはロックオンだ。
 それを聞いたリヴァイブはロックオンに向き、くすくすと笑った。
 「アニューは何も知らないよ?ヴェーダに関しては、ね」

 途端、艦内のアラートがけたたましく鳴り響いた。
 それに気をとられ、次の瞬間には、ティエリアの目の前からリヴァイブの姿は消えていた。
 しまった、と掴みかかろうとするロックオンをあしらいながら出入り口に向かおうとしているリヴァイブに照準を合わせる。しかし、彼の腕にはスメラギが捕らえられていた。
 「貴様…ッ!」
 「撃てないの?」
 「なんだと…!?」
 顔を怒りに歪めているティエリアに、リヴァイブは心底軽蔑するような目で見下した。
 「ふーん、……撃てないんだ」
 「てめぇッ!」ロックオンが右腕を繰り出す。
 「おっと」
 リヴァイブはひらりと交わし、スメラギを突き飛ばした。ここは無重力だ。飛ばされたスメラギの体はなすすべもなくロックオンにぶつかった。
 人質が離れた隙にティエリアが何発か撃つが、どれも空振りでリヴァイブはあっという間に扉の奥へと消えてしまった。
 「くそ…ッ!」
 「ティエリア、ロックオン、すぐに格納庫へ向かって!」
 「ミススメラギ…?」
 ロックオンに支えられつつ体勢を持ち直しながら、スメラギは戦術予報士の顔になった。
 「…彼らの狙いは、おそらく、ダブルオーよ」
 その後を聞くまでもなく、ティエリアとロックオンは飛び出した。
 その先に待っている、悲劇を知らずに。




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悲劇って何←お前
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  経済特区日本。多国籍企業が特に密集しているここ東京のマンションに間借しているのは、一人暮らしには些か若すぎる少年だった。刹那・F・セイエイ。歳は十六である。見境なく跳ねまくった黒髪に、周囲は全て敵だと言わんばかりの色に染まった褐色の瞳。年齢よりも幼く見える童顔に浮かぶのは感慨のない表情ばかりだ。というのも、刹那は感情の出し方をよく知らないのだ。昔は無邪気に笑っていたのだろう、と言えばそれは本人ですらわからない。刹那自身、彼の過去は忌々しいものでしかなく、同時に己の枷であり、そして彼を今突き動かしているのは紛れもなくその過去が関係している。ただ、その過去が周囲の予想するような、微笑ましいものではなかった。それだけだ。
 今日のミッションは何も伝えられていない。何度携帯電話を見ても暗号通信記録はないし、刹那は暇を持て余していた。何気なくボタンを弄繰り回していると、出てきたのは昨夜エージェントの王留美から届いた「現状維持」を示す暗号。要するに、本日刹那は非番であった。
 何もすることがない。ベッドにごろんと寝転がり、未だ開けていない遮光カーテンの足元からは光が漏れ出ている。薄暗い部屋の唯一の光源は、それと刹那の手にある携帯電話の画面だけだ。このまま見つめていて何の意味があるのか。刹那は無言で携帯電話を閉じた。二度寝もいいだろう、と思い目を閉じる。しかし、任務のため不規則な生活をしているといっても長年かけて染み付いた生活習慣か、数時間睡眠をとれば仮眠無しの二日連続徹夜すら耐えられてしまうこの少年には一向に眠気が訪れない。パッチリ目を見開いたまま、刹那は身を捩り「暇」という敵に静かに立ち向かっていた。
 ピンポーン。
 玄関のチャイム。刹那は時刻を確認した。午前八時。特に予定はない。何か宅配を頼んだわけでもないしそんな連絡もない。来訪者にしては些か不自然な時間帯だ。
 ピンポーン。
 刹那は訝しげにベッドから降り、腰にショットガンがあることを確認した。そこで、インターフォンの映像を確認する。そこに見慣れた人物が映っているのを見て、軽く目を見開いた。少し息をつき、刹那はインターフォンの受話器をとった。
 「…はい」
 『セイエイさん、宅急便でーす』
 と、ふざけた調子で言う男に対し、刹那は無言で受話器を切り、玄関へと向かった。腰の銃を再度確認し、左手で扉を開ける。
 淡い茶髪に、緑色の双眸を柔らかに細め、手にはケーキの箱を持っている。自分より頭三つ分程高い位置にある男の顔を、刹那は怪訝そうに見上げた。
 「ロックオン・ストラトス」
 「よう。元気かー刹那」
 「…とりあえず、入れ」、と刹那はドアを広く開け、ロックオンに促した。フロアで話すのは人の目につきやすい。おかしな噂や詮索をされるのは好ましくない。
 ごく自然な動作でフロアを見渡し、誰もいないことを確認すると、刹那は扉を閉めた。「付けられてはいないはずだぜ」とロックオンが言う。
 「これ、駅前で買ってきたケーキ。結構お前、気に入ってたみたいだから」
 「ロックオン・ストラトス。一体何の用だ」
 人好きがいいと評判の笑顔にさえ、刹那の場合は警戒の対象でしかない。というよりも、彼の笑顔に絆されるマイスターはアレルヤくらいだ。彼の場合、年齢が近いせいもあるのだが。
 愛想ない刹那に苦笑しつつ、ロックオンはその頭を撫でた。刹那は無言でそれを振り払い、彼を睨み付ける。そんなつれない態度にロックオンは肩を竦めた。
 「俺も今日は非番でね。久々に地上に降りたから、遊びにきたってわけ」
 「なぜ」
 「何故って…まぁ俺が暇だったからってことにしといてくれよ。ってお前カーテンくらい開けろよ…部屋真っ暗じゃないか」
 全体を見回していうロックオンの表情は、暗がりでもよくわかった。彼は声で表情がわかる。素直、なのだろうか。それでも、それが真実そうであるかは刹那にはわからない。たとえ彼が同じガンダムマイスターであっても、自分にとっては他よりも信頼できる程度の、警戒すべき他人でしかない。刹那は「大人」が苦手だった。それも、男なら尚更だ。
 おもむろに廊下の照明を点け、刹那はカーテンを開ける。入ってきた日差しは暗がりに慣れた目には痛く、思わず顔を逸らした。
 「おじゃましまーす、と」
 勝手知ったる他人の家。「冷蔵庫に入れとくぞ」、と刹那の返事も聞かずにロックオンはケーキを仕舞い込んだ。特にプライベートを気にしていない刹那は何も言わず、フローリングに座り込んだ。何をするまでもなく、ぼーっとレースカーテンの外を見つめて。
 「どーした、刹那」
 まるで弟に接するかのような柔らかさで、ロックオンは問いかけた。刹那は「何も」と答えるだけで、視線は窓の外に向けたままだ。
 東京の空は平和だ。街も、人も、宇宙や世界で起こっている紛争を情報として片付け、自分とは関係ないといわんばかりに生きている。時折報道される戦地の映像を見るたび「怖い」だの「恐ろしい」だの言っている割に、結局彼らはそれらの本当の恐ろしさをしらないまま、知ろうともしないまま、ただ情報として片付けている。恵まれた国では皆こうだ。恵まれた環境を何の疑いもなく享受し、それを当然として受け入れ、果てには、更なる富を目指し相手を搾取する。それが紛争の原因だ。刹那はこの国が、この場所があまり好きではない。おそらく、この地上のどこにも彼が気に入る場所などありはしないのだ。落ち着く場所はあるとしても、彼が理想とする場所は、まだこの世界にはない。最も、それが出来る頃、自身はその地に立てないだろう。ソレスタル・ビーイングはその礎、否、世界にとって「悪魔」にしかなれない。自らを「神の御使い」と称した、矛盾した武力行使を続ける「悪魔」。
 「刹那。休めるときには休んだ方がいいぞ」
 突然の言葉に、刹那は反応が遅れた。視線を向けた声の主は労わるような、どこか厳しい表情を浮かべている。心配、だろうか。
 「疲れているわけじゃない」
 「そうは言うが…まぁ、俺も押しかけたから言える立場じゃねぇけど」
 「………」
 「気分転換にどっか行くか?」
 ハッとして、振り返る。ロックオンの視線は窓の外に向いていた。ごそごそと上着のポケットをまさぐり、中指にキーホルダーの止め具を絡めにこりと笑いかけてきた。
 用意周到。一瞬面食らった顔をしてから、刹那は重い腰を上げた。
 「静かなところがいい」
 世の喧騒も、幸せな人々の笑い声も、何もない場所に。
 了解、と緑色は暖かく細められた。
 
 
 
 
 連れられたところは、小高い丘だった。街か見渡せる程度の、国立公園。あまり人影がないのは、きっと今日が平日だからだ。
 途中寄ったパーキングエリアのファーストフードで、妙齢の女性店員は注文するロックオンに始終顔を赤らめながら受け応えし、刹那が目に入った瞬間、食いつかんばかりに「弟さんですか」と尋ねた。そのときは「誰が」という気分だったが、ここで否定しても面倒なのでそういうことにしておいた。擬似人格タイプR12。内容は「素直で元気いっぱいの弟」。刹那が元気よく「うん!」と答えたときのロックオンといえば、顔が引きつっていた。
 
 「空気が冷たくて気持ちいいな」
 背伸びして芝生に倒れこむロックオンは、本当にリラックスしているようだった。対して刹那は座り込むこともせず、ただ佇み眼下の街を見下ろしている。薄く見えるビルの色は全て白っぽく、どことなく計算された美しさがあった。
 刹那の故郷に、こんな風景はない。
 砂漠があり、瓦礫があり、銃声が止まず、巨大なモビルスーツが徘徊する、地獄。刹那の中にある故郷の姿はその時のまま止まっている。国を出て以来、それからどうなったのかなど知らない。その点では、自分も何ら、あのビルで埋め尽くされた楽園に住む人々と変わらないのだ。いや、自分と彼らは何も違わない。「違う」という明確な答えなどありはしない。寧ろ、ただ一線を引くだけで勝手に異なるものと判断すること自体が歪んでいる。それでも、「知ろうとしている人間」と「知ろうとしない人間」の差は大きい。残念ながら、世界は後者の方が多いのだ。
 静かな世界。風が草や葉を揺らす、のどかな場所。
 
 銃声の鳴り止まぬ世界。身の丈には余るライフルを抱えて走る自分。
 
 俺は、ここには、異物だ。
 
 「ロックオン・ストラトス」
 「んー?」
 「ここは静かだな」
 「そうだなぁ」
 「俺は、あまり落ち着かない」
 「…そっか」
 じゃあ、帰るか。
 せっかく連れてきてやったのに、と文句を言うわけでもなく、ロックオンは起き上がった。座り込んだまま離れた場所に立つ刹那を見上げ、少し顔を歪ませて、よっこいしょ、と立ち上がった。
 「確かに、俺たちには不似合いな場所だ」
 自嘲を滲ませた笑みを浮かべ、ロックオンはレンタカーの方へ踵を返した。何も言わなかったのは、彼も同じようなことを考えていたからだろうか。
 
 助手席に乗り、シートベルトを着用したのを確認すると、ロックオンはエンジンをかけた。時刻はもう昼を回っている。昼食はファーストフードで済ました。
 
 「帰ったら、ケーキだな」
 朗らかで優しい低音が風に消える。
 
 「甘ったるいものでないなら」
 「子供は素直に甘いもの食っとけ」
 苦く笑う大人の声には、哀れみすら滲んでいた。
 
 
 
 
 
 
            武力介入開始から、十日目の話。
 
 
 
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 目まぐるしい一日だった。と思う。あれからまだ二十四時間は経っていないはずだ、と、沙慈・クロスロードは腕時計を確認した。
 普通に宇宙ステーションでパネル作業をしていたところに、カタロンの内通者と疑われ、高重力下のコロニーで肉体労働されたと思ったら、アロウズによる、厳密に言えば対人兵器による掃討作戦。簡単に奪われていく命を、沙慈は黙って立ち竦むことしか出来ずにいたが、そこで手を差し伸べてくれたのは嘗ての隣人、刹那・F・セイエイだった。偶然にしたって、自分と面識のある人物に出会えたことに大きく感動した。けれど、それも束の間。
 
 彼はソレスタル・ビーイングのガンダムマイスターだった。
 どうして、と僕はまた立ち竦んだ。
 目の前に聳え立つガンダムに、そのコックピットへ迷うことなく乗り込んでいく刹那に。
 
 彼が、殺したというのか。僕の大切な人の家族を、僕の大切な人を傷つけた?彼が?
 
 沸いてきたのは困惑と、憎悪と、哀愁だ。
 
 ただ立ち竦む僕は、まもなくソレスタル・ビーイングに回収された。
 途中何人かの構成員らしき人に出会ったが、僕はそんなのも目に入らなかった。
 ただ、ガンダムから刹那が降りてきて、もう一方のガンダムから降りてきた人と親しげに話しているのが憎らしくて、僕は湧き上がる憎悪を訴えた。五年前に感じた無力感や悲しみがリアルにこみ上げてきて、僕は訴えた。
 
 「君達のせいで…ルイスも…ッ姉さんも……ッ居なくなったんだ!」
 「………」
 「何とか言えよ!?」
 彼の、刹那の懐に突進して、彼の腰にあった銃を奪った。彼は戦い慣れていたのに、こんなにも簡単に一般人に銃を奪わせてしまうのはおかしい。でも、頭に血が上りきっていた僕にはそんなのどうでもよかった。ただ目の前の存在が憎らしくて、慣れない銃向ける。いつでもトリガーが引けるように、人差し指を引き金にかけて。
 そうまでしても、刹那は何も言わなかった。初めて会った時と同じようにまっすぐな瞳で見つめ返してくる。弁解も、僕の主張を嗤うこともしない。だからといって曖昧に済ませようとするわけでもない。
 目を逸らした瞬間、僕は迷いもなく彼を撃つだろう。そんな勢いにも関わらず、刹那は怯みもしなかった。
 「言えよ…!」
 刹那は何も言わない。卑怯だ。その態度に、更に怒りが増す。
 「返してくれ…ふたりを…ッ!」
 脳裏に浮かぶのは、いつも元気に僕を連れ回したルイスと、いつも優しく笑いかけてくれた姉さん。
 けれど現実に映る者は、僕の大切なその二人を奪った男だ。
 銃を握る手が震える。撃て。撃つんだ。仇を。
 
 でも、僕は撃てなかった。
 そんな僕が不甲斐なくて、悔しくて、僕は叫んだ。
 
 「返してくれよぉおお!!」
 
 
 
 興奮状態だった僕は鎮静剤を打たれ、独房へと閉じ込められた。
 けれど待遇は監禁よりも軟禁に近く、ここの構成員であろう小さな女の子と、顔に小さな傷がある男の人がハロと呼ばれる端末?のようなものを残していった。情報の閲覧は可能だと言われたので、僕は迷いもなくキーボードを操作した。ルイスの家族についての情報が知れる機会だ。
 キーワードが一致し、表示された情報では、結局何の情報も掴めなかった。刹那達とは敵対関係にあり、ソレスタル・ビーイングの方針に反する者たちの所業。そんなことどうでもよかった。沙慈が知りたかったのは、「何故ルイスの家族が殺されなければならなかったのか」だ。肝心のそれが「UNKNOWN」では、意味がない。
 「ソイツラ、テキ、テキ」と連呼する赤ハロ。テキだかどうだか知らないが、どちらにしろ、ルイスや彼女の家族は、ソレスタル・ビーイングに傷つけられ、殺された。彼らの内情など、知らない。
 
 『自分のいる世界くらい、自分の目で見てみたらどうだ』
 不自然なまでに赤い色の目をした男が脳裏に浮かぶ。
 
 『君は現実を知らなさ過ぎる』
 
 「……それが、何だって言うんだ……」
 現実を知ったところで、何が変わる。
 そもそも、現実ってなんだ。戦いか。お前たちの言う、ただ奪い、破壊するだけの!
 
 「一体…何が……!」
 両足を抱き込んで、目を閉じる。
 赤ハロはいつの間にか黙り込んでいた。やけに静かなこの独房は、絶望しか与えてくれない。
 
 

 「刹那。落ち着いて、聞いてね」
 落ち着いて。そう繰り返すスメラギ・李・ノリエガの方がどうかしている、と俺は思う。黄色人種でありながら透き通った肌は心なしか気色良くないし、スメラギの隣に立つティエリアも難しい顔をしている。なぜ?ヴェーダに異常でもあったのだろうか。俺がそう尋ねると、ティエリアは自分のわかる範囲では問題なかったと答えた。義務的な内容だったが、やはり声は少し震えているような気がする。胸がざわざわする。
 「言いたいことがあるならはっきり言ってくれ」
 待つのは好きじゃない。そう言うと、スメラギは息を吸い込み、戦術予報士の顔になった。
 「貴方の右脇の傷の治りが遅いのは、擬似GN粒子によるものだというのは、前に話したわよね」
 「ああ。だが通常より進行が遅いとは聞いた。それが何かわかったのか?」
 「………」
 まただんまりか。溜息をつきたくなるのを堪えて、次の言葉を待つ。
 しかし、いつになってもスメラギは顔を上げない。何を悩んでいるのか。そんなに深刻なことなのだろうか。ならば尚更早く教えてほしい。俺は助けを求めてティエリアを見遣った。
 「ヴェーダにアクセスし、刹那、君のデータを解析させた」
 ティエリアは目をそらすことなく此方に向いている。
 「ヴェーダには4年前の君のデータ…即ち、君がマイスターになる前の健康状態のデータが保存されている。それと比較した。続けて、僕のデータ、そしてアレルヤとマリィのデータとも照合した」
 「…なぜ?」
 何故他の三人の健康データを比較しなければならないのか。それぞれ年齢も違うし、マリィなど性別すら違う。
 パンツのポケットから端末を取り出し、作動させたティエリアはずい、と俺の方に差し出した。
 そこに映し出されているのは、脳波、塩基の螺旋。そこには五人分のデータが一覧に並んでいた。アレルヤとマリィ、ティエリア、四年前の俺と、今の俺のデータだ。
 「DNAを重ね合わせて見ろ」
 ティエリアの言葉に従い、俺は端末を操作した。
 重なっていく五つの螺旋。すると出来上がったのは、重なった二つの螺旋だ。
 一つは少々ブレがあるものの、殆ど一致した塩基配列を表している。そしてもう一つは、四年前の刹那のものだった。それは他の四つと重なり合うことなく、独立していた。
 歳をとるにつれDNAの配列が変わるなど、ありえることなのだろうか。その分野には生憎と詳しくない。
 「次に、脳波」
 呆然として端末操作が留守になっていた俺を見兼ねて、ティエリアが横から操作した。
 先程と同じく重なり合っていく五本の脳波。すると、今度は不規則に動くものが三本。
 「これがアレルヤとマリィ、これが四年前の刹那。…そしてこれが、僕と君の脳波だ」
 ティエリアが言う。
 俺は呆然と、そのグラフに見入っていた。
 さすがに、もう彼らの言いたいことはわかっていた。
 「人はそれぞれ違った脳波パターンがある。事故などのショックで脳波が変化することもあるけれど、それでも誰かと一致することはない」
 「あるとすれば、それは人為的なもの。アレルヤやマリィさんに行われていた研究や、」
 「僕達イノベイターが生まれる上で最も重要な操作」
 言葉を詰まらせかけたスメラギの後をティエリアが継いだ。
 二人とも言葉に出来ない表情を浮かべている。俺は今どういう顔をしているのだろう。特になんの感慨もない、ただ驚いているくらいだ。
 「俺はこの四年間の間、特にそんな研究に付き合わされた覚えはないが」
 「原因も把握している」
 「なに?」
 「ダブルオーガンダム。あれが原因だ」




イノベイターって歳とり難いなら、せっつんもそうなるのかなぁ。

 

 ランスロットの腕からもぎ取るようにして腕に抱えた少女の体は酷く冷たく、いつかに受け止めたときよりも酷く重く感じた。少女の体の中心から溢れるように出る赤いものは止まることを知らず、ついにはスザクの着ていた白い騎士服までも真っ赤に染めた。目の前で命の火が消えかけている。スザクはユーフェミアを強く抱き締め、ブリッジへ繋がるエレベーターに乗り込んだ。途中整備士の慌しい声や悲鳴やらが後ろで姦しくしているのを遠くに、スザクは一切の音を遮断した。

 「ユフィ…ユフィ…!」
 腕の中の存在にいくら呼びかけても、体を揺らしてやっても低くうめき声を上げるだけ。それならまだよかった。ユーフェミアは声を漏らすこともなく、ただ眠るようにしてだらりとしている。腕に力は入っておらず、その状況は最悪だとスザクに認識させた。けれどスザクはそれを振り払うかのように尚もユーフェミアの名を呼び続ける。
 「ユフィ、ユフィ、目を覚まして、お願いだ、目を閉じるな!」
 頼むから、頼むから、目を覚まして。
 知らず緑の双眸からは雫が滴り落ちた。落ちたそれはユーフェミアの血にそまったドレスに色もなく沈む。
 「ユフィ……ユフィ…ッ!!」
 スザクの声はもう掠れきっていた。喉が焼け付いてしまったかのように。本当に焼けてしまって、それでユーフェミアが目を覚ますならそれでもいい。だから、どうか、どうか。

 チン、とエレベーターが目的の階についたという合図が鳴る。
 何重もの扉が開かれ、そこで出迎えたのはよく知った二人だった。具体的な名前を認識する前に、スザクは叫んだ。もう誰でもいい。誰か、誰でもいいから。

 「お願いします…ユフィを、」

 腕の中の存在がまた重みを増した。

 「ユフィを助けてください!!!」





-------
エレベーターの血が奥の方から滴っていたので、こんなんだったんじゃないかなぁと。
何度見てもあそこは、ルルーシュこの野郎ってなります。それにしても櫻井氏の演技は好きだぁ。

 預言に死を宣告された俺の代わり身になるようにと連れてこられたのは、俺とそっくりな顔をした子供だった。子供といっても、俺と同い年くらいだ。けれど父が言うには、生まれてまだ数ヶ月らしいという。この俺にそっくりな子供は、自分のことを『レプリカ』だと名乗った。お前の『代替品』として死ぬのだと、億尾にもせずに。
 俺は呆然とした。だって本当に鏡が目の前にあるのかと思うくらい俺達はよく似ていた。だから余計におぞましかった。俺という存在の代わりを作れるこの世界にか、それとも、自分ももしかしたら『レプリカ』なんじゃないかという何処からか湧いた恐れか。どちらにしたって気分の良いものではない。
 「お前、名前は」
 「通し番号なら」
 「違う、名前だ」
 「ないです」
 必要もないでしょう。でも死ぬ為には貴方の名前を一度お借りしなければなりません。ご無礼をお許しください、『ルーク』様。
 吐き気を催しそうだった。誰か目の前のこいつを俺の目の前から消してくれ。俺の顔で、俺の声で、そんなことを言うな。俺は人形じゃない。『俺』は人形なんかじゃない。
 「では、お前がアグゼリュスに向かうと」
 「はい」
 答える声は淀みない。
 「お前が死んで、俺はずっとこの屋敷に居残っていろと」
 「俺が死ぬことは公にはされません。だから、貴方は無事アグゼリュスから帰ってくることになる。帰国後子爵位を賜りになられるかと」
 「成してもいないことで施しを受けろというのか!!」
 そんな馬鹿な話があるか。
 俺は否定した。レプリカとは言えアグゼリュスに行くのは俺じゃなくこいつだ。なのに褒美は俺に与えられるだと。おかしいだろ、そんなの。
 すると『レプリカ』は小首を傾げて疑問の表情を浮かべ、次の瞬間には諭すように口を開いた。
 「どちらにしろ俺は貴方の『レプリカ』だ。貴方から生まれたのだから、これは貴方の功績です」




そんなアッシュ(ルーク)とルークの関係。
 
 

 新参者にやることなど殆どなく、暇を持て余していたところで、ハロとかいう機械に暇つぶしに丁度いい場所があると案内されたのがこの展望だった。
 入ってみると、先着がいたようだ。これが全く面識のないクルーならば引き返したが、見知った後姿を確認して、ライル・ディランディもといロックオン・ストラトスは小さく息をついた。
 すると気配に気付いたのか、刹那・F・セイエイが無感動な瞳のまま振り向いた。
 「ロックオン、ストラトス」
 「なぁ、それ止めないか」
 相変わらずフルネームでコードネームを呼ばれることには違和感を感じる。兄もこんな感じだったのだろうか。その時訂正はしたのだろうか。姿は似ていても自分は兄ではないし、生活を共にしたのも随分昔の話だ。双子だからと言って兄の行動原理がわかるわけもない。
 己の提案を聞いて、刹那は一瞬わけがわからないという顔をした。
 「空港ではコードネームで呼べと言われたはずだが」
 どうやら勘違いをさせたようだ。
 「あー…そういう意味じゃない。ただのロックオンって呼んでくれよ。フルネームって、なんか居心地悪い」
 「そういうものか」
 「そういうもんなの」
 あっさり頷いてみせた刹那に、ロックオンは心なしか意外に思った。彼のファーストインプレッションは、サバサバしていて一匹狼的な印象を感じたため、「狎れ合いなどごめんだ」くらいは言われると思っていたのだ。もしくは、「必要性が感じられない」とかなんとか。そこまで考えていて、ロックオンは自分がどれだけ刹那を捏造していたのか身をもって知った。しかしそうさせるくらい、彼には感情というものが見えない。
 「この艦は新参者には居心地が悪い」
 刹那は言葉を詰まらせた。
 「…まだ慣れていないせいもあるんじゃないか」
 「なら、良いんだけどな。でも問題はこっち側じゃなくって、そっち側だから、俺にはどうしようもねーんだよな」
 肩を竦めて見せると、刹那は視線を逸らした。
 それとほぼ同時に、ロックオンは展望の強化ガラスに近づき、自分より幾許か低い少年の隣に降りた。
 「面白いくらい、みんな同じ反応をする。そんなに兄さんと俺は似ているか」
 「…姿は、そうかもしれない。性格は、わからないな」
 「へぇ。兄さん、面倒見がよかったろ?」
 その言葉に、刹那は答えず視線だけロックオンに向けた。そうかもしれない、という顔をしている。ああやっぱり、とロックオンは頷いた。
 「一家の長男だったからな。元々兄貴体質だったんだ。…俺は、きっとそうじゃない」
 「同じになる必要はない」
 身体ごと向いて宣言され、今度はロックオンの方が言葉を詰まらせた。余りにも真っ直ぐな瞳は此方から目を逸らしたくなるくらい、突き刺さるような痛みを覚えさせる。それを誤魔化すかのように、ロックオンは瞼を伏せた。
 「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
 なら、なんでお前は俺にロックオン・ストラトスというコードネームを与えたんだ、とは言わなかった。彼がソレスタル・ビーングの全権を握っているわけではあるまい。上からの命令で、彼の口から聞かされることになっただけだ。
 同じ姿、同じ名前。兄弟だから、双子だからこそ、共通点が多いこと。そこには殆ど差異はない。新しいガンダムマイスターを求めているのならば、別に自分でなくたって良かったはずだ。
 ならばその“上”とやらは、“それ”を求めていると判断した方がいいのだろう。ソレスタル・ビーングは“ロックオン・ストラトス”を少なからず必要としている。それが一見余り仲が良いように見えないマイスターズのことに関係しているのか、それともガンダムに関係しているのかはわからないが。
 何しろ、情報が少なすぎる。けれどロックオンにとって、ライルにとってそんなことはどうでもよかった。

 自分はただ、兄の仇をとりたいだけだ。

 「俺は、いつになったらお前みたいに戦えんのかね」
 「…さぁな」
 その時、刹那の瞳が不意に揺れたことに、ロックオンは気付かなかった。



こんな感じで00初小説。口調わかんねー。はやとちりすぎる。


 朝。目が覚めたら泣いていた。

 酷い夢だ。
 己の腕の中には息絶えたルルーシュが冷たくなっていて、その身に剣を突き刺したままでいた。ふとよく見れば、もう一人も同じように串刺しになっていた。それは、アッシュフォードの学生服を着た、自分…いいや、枢木スザクが目を閉じて幸せそうに眠っていた。死んでいた。
 そしてもう一人、剣を握る自分の手に爪を立てている幼い枢木スザクが泣きながら此方を睨みつけている。大きく口を開けて、何かを言っていたが、聴こえなかった。

 どうやら自分は、思ったよりたくさん失っているようだ。

 ベッドから起き上がり、照明を点ける。ここは地下。朝でも夜でも真っ暗だ。


 そろそろ、身体が自由に動かなくなっている。食も細くなり、昔より随分白くなった肌の下の筋肉は殆ど萎えていた。筋や骨が浮き上がって見えるほどだ。
 体重はもう量っていない。量るだけ無駄だと思った。減るにつれ、自分の死がカウントダウンされていくのを見続けるのは、結構辛いものだ。歩くにしてもよろよろで、この地下の部屋から地上へ出ることは一ヶ月に片手で数えるくらいしかない。
 世界はゼロという存在を必要としなくなった。調和の象徴は、ゼロから世界協議の代表らへと移される。ゼロ自身がそう宣言してから、早五年。男は既に三十五年目の誕生日を迎えていた。

 「内臓が弱っているようだ」とインド人の女医は診断した。「原因は強いGによる内臓圧迫」だそうだ。ゼロは昔、世界唯一の最強のナイトメアに搭乗していた。そのナイトメアはパイロットの能力を最大限に引き出すことだけを目的として作られ、その後の影響は考慮されていなかった。事実、彼はそれまで高性能の機体を難なく操り、それまで健康でいたのだ。科学的に人体が耐えられないと判断されていたことでさえ、彼にかかれば嘘に変わった。

 しかし、結局俺も人間だったのだろう、とゼロは思う。十二年越しの“若げの至り”が今になって響いた。昔体力馬鹿と称された時代が懐かしい。今となっては、走ることすら叶わないだろう。
 治療は薦められたが、拒否した。既にゼロとしての役目を終えた今、永らえる命など持ちえてはいない。またこの先、争いは起こるかもしれない。けれどそれを鎮静できるほどの十分な力を残したつもりだ。ナナリー・ヴィ・ブリタニアという遺産。そしてその補佐に、コーネリア・リ・ブリタニアとシュナイゼル・エル・ブリタニアも置いた。シュナイゼルのギアスは既に解除されているが、意外か、それとも不思議だったのか。彼は二言で了承してみせた。ナナリーの補佐につき、出来ることをすると。以前の彼にはなかった目の光をゼロは見た。

 やれることはした。全身全霊を世界に捧げた。己の人格を否定し、象徴として在り続けた。
 そしてもうすぐ、十二年にも及ぶ贖罪の道は終わる。

 眠っていたばかりだというのに、激しい眠気に再び襲われ、ベッドに逆戻り。
 息が浅く、呼吸が苦しい。倒れこむようにしてシーツの海に沈んだ。目は閉じていないはずなのに、視界は真っ暗だ。

 俺は、今日死ぬのか。

 仰向けになり、片手を胸に置く。


 トクン、トクン、トクン、…トクン…、トクン…


 弱まっていく鼓動が伝わり、酷く穏やかな気分になった。
 見えない視界を更に瞼で閉ざし、もう一方の手も胸に置く。この部屋はナナリーには伝えてある。いつか、誰かが息絶えた死体を見つけてくれるだろう。
 それからは…ああ、だめだ、何も考えられない。頭が働かない。


 トクン、…トクン……トクン…………トクン…


 手の感覚も既にない。耳に伝わる振動が、止まっていく心音を教えてくれる。
 そろそろ、永遠の眠りにつく頃だ。死後の世界らしき場所は知っているが、出来れば地獄へ堕ちたいものだ。
 きっと彼が待っているだろう、そこへ。


 トクン…………トク…、…………。





軽く人物紹介。

枢木スザク
旧日本貴族枢木家跡取り。(政治的な介入はなく、ただの富豪。)
六月時点で18歳。アッシュフォード学園大学部の学生。五月で入院してしまったので、実質殆ど通っていない。
家の教育が厳しかった為か、自分を抑え込む傾向にある。父親とは表面だけの関係。自分と遊んでくれた母親が好きな分、その反動で父親は苦手。母親は病死。
人様の前では社交的。周りの殆どは「真面目で良いヤツ」と評価。(処世術)
それと反比例するように内面は荒み、中学生の頃から煙草を嗜むヘビースモーカー。その代償に癌を患う。
自覚症状が出たとき一度病院へ行き診断を受けたものの、「ああそうかですか」と放置。(時期は二月)
常に家や父親から解放されたがっている。

ジノ・ヴァインベルグ
ブリタニア侯爵家四男。(ブリタニアは大統領制。無論世界の三分の一を占めてるとか無茶設定はない。皇室は象徴として残されている。貴族は存在しているが、此方も政治的介入はない。)
六月時点で17歳。アッシュフォード学園大学部留学生。
人懐っこく、アニメと同じく無鉄砲。しかし家の四男という立場から結構苦労している。
留学理由は「気紛れ」。スザクのように家から解放されたいという意思はないが、己の努力をなかなか認めてもらえないストレスを感じている。
要するに「流石あの方の弟ね」とか言われてしまう、そんなジノ。しかし実のところ、兄達より優秀である。
兄弟間では孤立した存在。

アーニャ・アールストレイム
アールストレイム伯爵家の一人娘。ヴァインベルグ家の親戚筋に当たる。ジノの母親がアールストレイムの出で、アーニャの母の姉。
六月時点で15歳。アッシュフォード学園中等部に通う。
人見知りが激しく、感情を表に出すことが少ない。コミュニケーションを圧倒的に苦手とする。
親戚のジノとは仲がよい。スザクとはジノを経由して知り合うこととなる。彼とはすぐに打ち解けた。理由といえば、彼女自身よくわかっていない。

皇神楽耶
皇コンツェルン次期会長にして、皇家の次代当主。齢16歳にして経営の鬼才の芽が出始めている。
会社や家の実権は彼女の父親が握っているが、技量を信頼されているため、それなりの自由は許されている。
スザクとは親戚筋に当たる。スザクの母親が神楽耶の母の妹であり、彼女の死後、神楽耶の母はスザクの親権を巡って裁判を起こした。
スザクと仲がよく、枢木家での彼の実情を唯一知る“部外者”。
スザクの病を知り、会長権限を取引に利用するつわもの。

ロイド・アスプルンド
アヴァロン社キャメロット研究員兼チーフ。癌の研究を行う。医療免許を持つ。

セシル・クルーミー
同上。研究員兼副チーフ。医療免許と精神科もそれなりに齧っている。

アヴァロン社
シュナイゼル・エルガーを会長とするマルチカンパニー。メインは医療系。

皇コンツェルン
日本の大手企業。あらゆる産業に影響する。

ルルーシュ・ランペルージ
ブリタニア皇帝の側室にして騎士候マリアンヌ・ランペルージ卿(健在)が長男。ランペルージ家は庶民の出なので爵位無し。しかし母親が中々実力ある高位な軍人でそれなりに豊か。所謂成金。
爵位は無いが、血の半分は皇室。しかし12歳の時に廃嫡され(ルルーシュの意思)、母方のランペルージに姓を置いた。
スザクとは10歳の頃に留学したときに暫く世話になった。今でも連絡を取り合っている。

ナナリー・ランペルージ
ランペルージ家長女。ルルーシュの妹。少し身体が弱いが、脚は動くし目は見えるし、健康体。
あとは同上。

ユーフェミア・リ・ブリタニア
ブリタニア皇室第三皇女。まだ若いため、社交界進出はない。ブリタニアの一学生として生活している。
ルルーシュとナナリーとは腹違い。因みに彼女の母親が后妃(正妻)。
彼ら兄妹と共に9歳の頃日本に留学し、スザクに出会う。しかし、身分が身分なため、ルルーシュのように頻繁に連絡をとることはできないでいる。


・ブリタニア皇室備考
ブリタニアの旧体制の遺物。子供は、そんなに多くないです(笑)
第一皇子オデュッセウス、第二皇子クロヴィス、第一皇女ギネヴィア、第二皇女コーネリア、第三皇女ユーフェミア。以上が皇太子と皇女。
シュナイゼルさんはアヴァロン社の社長ですので、いらっしゃいません。


とまぁ、こんな感じかな…。裏話もちょびちょび入れてみました。出来たら書きたいです。

 外は、雪が降っていた。
 ブリタニアの冬は日本のそれよりも穏やかに訪れるが、寒さで言えば当然ブリタニアの方が厳しい。
 このときばかりは、仮面の中が暖かい。しかし、ゼロは今仮面をつけてはいなかった。ここは彼の自室。殆ど彼以外誰もこの部屋に訪れることはない。持ち主の彼でさえ、宮殿に赴くことが多い為に帰ることは少ない。

 本日は皇歴二〇一〇年、否、年号は改正され、正式には西暦二〇一〇年十二月五日。至上最悪、その行為から人々から人ですらない魔王だと罵られる存在の誕生日である。
 無論、魔王の誕生日など、世界にとっては忌むべくものだろう。悪逆皇帝の彼しか知らぬ人間にとっては、それは一年の中で最も忌むべき日かもしれない。だからといって、この日に何かあるかと言えば、特に何もない。人々は変わらず働き、家庭で暖をたいている。

 しかし、彼を知る者は、きっとこの日を祝福し、悔やむに違いない、と思う。

 ゼロはもう一度仮面を装着し、自室を抜け出した。

 彼の妹や、彼の友人達、彼と親しかった人間は、殆ど限られているだろう。しかし彼らはこの日を忌むことはないと確信していた。彼は、彼らに憎まれることが出来なかった。それが唯一の、あの計画の綻び。

 向かった先は、ブリタニアが管理している非公開墓地だ。非公開墓地には皇族の墓が代表的だが、それとは別に、皇族において罪を犯した者や、墓が国内外関わらず他者に荒らされそうな場合、また別の場所をとって非公開とされている墓地がある。

 誕生を祝うケーキはない。プレゼントもない。ユーフェミアと共に国の管理下の墓地に眠る彼へ挨拶はしたがそれだけだ。特に花を手向けることはなかった。
 ただ一言、「おめでとう」と呟いた。

 今年で、今日という日で君は僕と同い年だ。やっと大人になれたね。子供の頃が懐かしいな。あの時は無理をたくさんした。土砂降りの雨の中、ナナリーを探す為に野山に駆け出たり、免許もないのに大人の目を盗んで車を運転したり、今思えば本当に命知らずだった。子供なりに視野は狭かったんだろうな。僕だけでなく、君も。だってあの時本当に僕ら二人で出来ないことはないと思っていたんだ。でも、それを証明しちゃった君はやっぱり天才だよ。ねぇ、世界は凄く穏やかだ。ナナリーは頑張っている。君が残してくれた知恵…シュナイゼル殿下も、よくやってくれてる。時々引け目を感じるけれどね。でもそれも、僕にとっての罰なんだろう。
 僕は三ヶ月前からもう二十歳になっちゃったよ。ノネットさんが一緒に酒を飲もうとか言ってたけど、ゼロが成人してるって思ったのか、僕のことに気付いていたのか。だとすると、やっぱり僕は分かりやすいのかもしれないな。これでも頑張ってるんだよ。君に、ゼロになり切るために。甘えたことを言うなと君は言うかも知れない。だってこうしている内にも、僕は「僕」であることを止めていない。でも今だけだよ。今だけはいいかい。だって僕はゼロだし君もゼロだ。同じ人間が祝うって、そんなのおかしいからさ。
 今だけは、もう死んでるけど、ああ、枢木スザクの二年越しの遺言だとでも思ってくれていい。「おめでとう」、ルルーシュ。君とお酒飲みたかったよ。
 来年からは、きっと祝えない。枢木スザクは二十歳で死ぬ。君が二十歳まで生きられなかったから。
 だから、来年からは、ゼロとしてここに来るよ。ゼロとして君を労うよ。死人に口なしだからと言って、君が生まれたことを忌むだなんて、そんなの許されることじゃない。その時は私が粛清しよう。
 おめでとうルルーシュ。そしてさようなら。枢木スザクはすぐにそっちに行くだろう。そして私は世界を守り続けるよ。

 だから、おやすみ。また来年も来る。


 ゼロは静かに踵を返した。仮面から漏れる息は白く、やがて外気に溶け込んだ。
 マオの謀略の後、スザクはらしくもなく憔悴しきった様子で、ルルーシュの部屋のベッドに倒れこんだ。彼は軍の宿舎に戻るつもりでいたらしいが、それを引き止めたのはルルーシュだ。どこか、一人にしてはいけない気がしたのだ。ナナリーは既に自室に寝かしてある。彼女も長く緊張状態が続いたせいか、昼間だというのにすぐに寝息を立てた。後のことは咲世子に任せてあるし、大丈夫だろう。
 「…ルルーシュ、ナナリーについててあげなよ」
 先程から、シーツを身体に掛けずにいるスザクはずっとこう訴えている。しかし、何度もルルーシュは首を横に振った。
 「お前が寝たら、そうする」
 「僕は大丈夫だから。ナナリーが不安がるよ。怖い夢でも見て、起きて君が傍にいなかったら、あの子が可哀想だ」
 それはお前だろう。ルルーシュは口に出すことなく毒吐いた。きっと彼の頭の中には、七年前の情景が走馬灯のようにぐるぐる巡っているに違いなかった。その証拠に、スザクの両手は固く握り締められている。そのことに本人が気付いていないから、ルルーシュは心配なのだ。
 昔、七年前の俺ならば、こんなことで、と鼻で笑ったかもしれない。スザクは強いんだから、と無条件に信じ込み、このように扱うこともなかっただろう。あの暴君が悪夢に怯える?有り得ない。きっとそう思ったに違いない。
 けれど時は過ぎた。七年という長い月日。あの頃、自身やナナリーのことで精一杯だった俺には、今のスザクの苦しみがよくわかった。自分も、母が死んだことをトラウマに悪夢を見たことは数々ある。ナナリーなどきっとその比ではないだろう。何せ、あの子は目の前で母親を殺されたのだ。安定しているという方が、間違っている。
 しかしスザクはどうだ。再会した時、こいつは酷く安定していた。と思う。物腰は相変わらずだが、口調や表情が記憶と食い違っている違和感を感じつつも、そんな場合でもないことに関わらず、俺は素直にスザクが生きていたことに喜んだ。軍に入っていたのは気に入らないが、ああ、ちゃんと笑っている。元気にしていたのかと。
 それも今となっては見当違い甚だしい。
 スザクはあの時何故、黙って撃たれたのか。不意打ち?いや、マシンガンの弾を避けれる男が、まさかすぐ背後の殺気や銃口に気付かなかったわけがないのだ。ならば、相手が上司だったから?抗議くらいしたはずだ。しかしスザクはしなかった。気付かない振りをした。

 あの時、スザクは己が撃たれることを分かっていたのだ。

 考えた末の結論に、ルルーシュは膝の上で組んでいた両手をきつく握り締めた。悔しくてたまらない。スザクの口から聞く前に、スザクがそれを話す決心をする前に、事故であったが、他人を媒体にしてスザクの触れられたくない部分に土足で踏み入ってしまったことが、許せない。
 現実問題、あの時からスザクはルルーシュに対してずっと怯えている。ルルーシュが「誰にも言わない」と言ったことを疑っているわけではないが、彼の根本が、ルルーシュを遠ざけたがっている。
 それに気付きつつも、ルルーシュは彼の好きなようにやらせるわけにはいかなかった。自分の場合は、同じ傷を負うナナリーがいたからまだ正気を保てたのだ。しかし、スザクは。
 彼にそのような人間がいれば、きっと、ここまで怯えることなどないはずなのだ。

 「…七年間。ずっと一人で背負ってきたのか」
 びくり、とスザクの肩が分かり易く縮こまった。言ってしまってから、ルルーシュは後悔したが、このまま何も話さないでいたら、これから先ずっとこの話題を持つことなど出来ないと危惧した。だからルルーシュは続けた。
 「俺は、お前がこの七年間何をしていたかは知らない。七年前、俺達が別れるとき、お前、何か言いたかったんだろう。でも言えなかったんだよな」
 「違う、ルルーシュ。僕は君達を信用していなかったわけじゃない…」
 「わかってるよ。わかっているから、落ち着け」
 上体を起こしたスザクを、ルルーシュはベッドへ押し戻した。
 「俺は…俺は殺すつもりなんてなかったんだ…」
 瞳を虚ろにして、スザクは天井を見上げた。視界にルルーシュの姿は映らないが、ルルーシュはスザクの右手を握り締めた。その手が握り返してこないことに、ルルーシュは悲痛になる。
 「戦争が嫌だった…たくさん死んでいくんだ。日本人も、ブリタニア人も、たくさん死んでいく…僕もルルーシュもナナリーもいつか殺されるんじゃないかって、ずっと怖かった……だから、父さんが、皆に戦えって命令する父さんさえ説得できれば、戦いは終わるって、本気で思ってた」
 そしたら、ルルーシュもナナリーも死なずにすむんだ。
 掠れた声が酷く幼い。ルルーシュは「うん」、と肯定とも否定ともとれないような曖昧な相槌をついた。
 事実上、枢木ゲンブの死により、戦争は終わった。幼かったスザクの考えは間違いではなかった。しかし、ルルーシュの回転の速い頭は、それだけでは駄目だったという結論に至る。頭を失った国は、相手国の体の良い玩具だ。エリア11のナンバーズの人権は他植民エリアと比べれば戦後七年経ったとしても、最低レベルだ。世界有数のサクラダイト産出地であることや、未だ日本軍に力を残したまま無理矢理終戦してしまったため、レジスタンス活動があまりに頻繁であるということも要因の一つではある。

 けれど、それは――
 「みんな僕のせいだ」
 スザクは左腕で自らの顔を覆った。きっと隠された彼の顔は、泣きそうに歪んでいるのだろう。
 「違う」、ルルーシュは真っ向から否定した。
 「それは違う。スザクのせいじゃない。お前が日本を貶めたなど、あるわけないだろう」
 「全ての原因は僕だ…」
 「日本の負けは避けられなかった。それは、スザクだってわかっていたはずだ。お前がどうこうした、しなかったからってその結果は変わらない」
 「でも、交渉の場は持てたはずなんだ…」
 「京都が持ったんだろう。反枢木内閣派の。……その結果が、今のこの状況なんだよ、スザク。お前のせいじゃない」
 お前はよくやった、などと言えるわけもない。スザクは悔いているからこそ、名誉ブリタニア人になり、軍人になった。ルルーシュとしては、すぐにでも辞めて欲しいと思う。しかしこれはきっと彼が課した自分への罰なのだ。
 もし、日本が普通に負けていたら。否、枢木ゲンブの謀略により、ブリタニアに売られていたら。ルルーシュはそれを知っていた。だから七年前、自分は薬を含まされ、ナナリーは連れ去られた。スザクはこれを知っていただろうか。枢木ゲンブ自決のニュースが飛び込んできたとき、スザクはおかしくなかったか。スザクに助けられたのだと言っていたナナリーは、その後のスザクの様子の変化に敏感に気付いていた。俺自身もそうだ。いつも元気でよく喋るスザクが、ゲンブの死を耳にする前から、随分大人しくなっていた。ならば、あの時だ。あの時、既にゲンブは死んでいた。スザクに殺されていた。

 おかしい。
 何かが食い違っている。

 スザクは、まだ俺に何かを隠している。そんな気がしてならない。

 七年前。ブリタニアと日本が緊迫状態にあり、その頃太平洋及び東シナ海上にて戦争が開始された頃。

 薬の効き目が切れて目を覚まし、外に出ればすぐにナナリーは見つかった。外は雨が降っていた。俺は泥まみれになりながら縁側に佇む車椅子に駆け寄った。何があったと問えば、ナナリーはわからない、と首を横に振った。スザクはどうした、と訊けば、どこかに行ってしまってわからない。足音が雨にかき消されてわからなくなったと不安げに答えた。今までどこにいたんだ、と尋ねると、ゲンブ様とお話していたとナナリーは答えた。そうだ、これは枢木の、ゲンブの策略だ。そう思い出した俺は、泥だらけの靴を脱ぎ捨てて縁側を走った。
 結局、自力でスザクを見つけることはできなかったが、あそこで俺は、見覚えのある老師を見た。
 桐原泰三。そして、藤堂鏡志郎。その二人が黒塗りの車に乗り込むところを目撃していた。

 その日の内にスザクに逢えることはなかったが、次の日、尋常じゃない様子のスザクは蔵を訪ねてきた。
 そして突然の、本家行き。

 そうだ、あの時だ。
 ならば、スザクは。こいつが本当に責めるべきは。

 スザクの手を握るルルーシュの手が、小刻みに震える。
 スザクはいつの間にか眠ってしまったのか、それに気付くことはなかった。ルルーシュは息を呑んで、彼の顔を覆う左腕を外させ、身体にシーツを被せてやった。
 目尻には涙の跡がある。きっと泣いていたのだろう。それを見て、ルルーシュは胸が張り裂けそうだった。ルルーシュは気付いてしまった。スザクの罪の根本に、我々兄妹が存在していたのではないかという可能性に。

 「すまない、スザク」
 もう力んでいないスザクの右手を額に当てて、ルルーシュは神に懺悔するように許しの言葉を紡いだ。
 枢木スザクという存在を破壊してしまった一端を担っていた。否、根本を担っていたかもしれないという事実は、ルルーシュの胸の中に納得という言葉と共にストンと落ちた。そして湧き上がってきたのは、罪悪感と、守られていたことに気付いていなかった自分への怒りと、他人事にように彼を励まそうとしていた自分のおこがましさを呪った感情だ。
 「すまない…すまなかった…」
 なぁ、俺達のこと恨んでないのか。声にならない問いを、ルルーシュは投げかけた。
 きっと彼は、「まさか」と言うのだろう。自分達を恨まずにいられる彼は、どうしようもないくらい強かった。この根本的な部分だけは変わらないでいてしまった。
 しかし同時に、ルルーシュにはその恨み言受け入れる強さなど持ちえていないと痛いくらいわかってしまった。

 卑怯だと思う。言葉にさせる機会を与えることもしない俺は、こうしてスザクが眠っている間に懺悔する俺は、どうしようもなく卑怯だ。

 外はいつの間にか、激しい夕立が降り続いていた。




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